日替わり NAT’s Champloo

音楽やライブ(HM/HRやボカロなど)、旅行など、ごちゃっとした日記

冨田勲追悼特別公演 冨田勲×初音ミク「ドクター・コッペリウス」を見てきた

Dr.Coppelius 2016
冨田勲さんの遺作となった作品「ドクター・コッペリウス」初演を見てきた。

この作品は、「イーハトーヴ交響曲」でプリマに採用した初音ミクにバレエを踊らせたいという冨田さんの思いと、バレエに関心のあった糸川英夫博士の「ホログラフィーと踊ってみたい」と冨田さんに語った思いと、2つの思いによって作られたもの。
11/11(金)夜公演と11/12(土)夜公演の2回見ました。11/11(金)はかなり前の左端の席で、音は近くに聞こえたけれど、初音ミクやバレエの様子がやや見えにくかった。11/12(土)は1階席の後ろの方ではあったけれどステージ真っ正面で、ステージの様子や全体像が把握できた。
一番印象に残ったのは、コッペリウスとミクが一緒にバレエを踊るシーン。ステージ中央に設置された投映装置に、チュチュを着てバレエを踊るミクが登場する。それを真似て、ぎこちなくバレエを踊り始めるコッペリウス役の風間無限さん。だんだんと二人の動きが揃っていく様子は、一方が映像である事を忘れる、まさに初音ミクと人間の共演であった。そして、コッペリウスがミクの体を持ち上げるリフトまで実現した。
これが見られただけでも、見に来た価値はあった。正直に言うと、投影装置の画像が粗いとか、まだ改良の余地はあるとは思うけど、バーチャルな存在である初音ミクと人間のバレエの共演を達成できたというのは、ひとつのマイルストーンだと思う。
「ドクター・コッペリウス」には、物語にしても音楽にしても、色々とコンテキストが散りばめられてて、そこが刺さると心動かされる。糸川博士がバレエを習った逸話もしかり、糸川博士の名前が付けられた惑星イトカワへ向かった惑星探査機はやぶさしかり。自分は、冨田さんの楽曲「イトカワはやぶさ」が流れたとき、地球に帰還した時のはやぶさを思い出して、心動かされた。
バレエを生で見るのは今回が初めてであったが、出演者の風間無限さんの動きが凄かったのに関心した。そんなに体を傾けては倒れるのではという姿勢で静止したりして、それを支える筋力やバランス感覚は凄いのだろうなと。
最後は、コッペリウス、小江、子供たちのバレエダンサー全員が登場して、初音ミクと一緒に踊り、大団円を迎える。最後に、冨田勲さんの姿がスクリーンに映って、舞台の幕が下りる。物語の最後に、初音ミクは宇宙へ旅立った。きっと、冨田勲さんもそうなのだろう。
終演後、来年4月に、すみだトリフォニーホールにて再演が決定した事がアナウンスされた。
イーハトーヴ交響曲」の演奏は、初演以来何度か演奏され、その度に少しずつ演奏やシステムが改善され続けている。おそらく「ドクター・コッペリウス」も、何度も再演される中で改善されていくのだろう。ただ今は冨田さんはこの世にはいない。それは冨田さんの思いを引き継いだ人達の宿題になるのだろう。
初音ミクと人間を一緒に踊らせるのは、技術的にも大変な試みで、指揮者に合わせて初音ミクが歌う「イーハトーヴ交響曲」以上の挑戦のはず。それでも実現しようとした冨田勲さんの偉大さをあらためて実感した公演でもあった。