日替わり NAT’s Champloo

音楽やライブ(HM/HRやボカロなど)、旅行など、ごちゃっとした日記

初音ミクのテーマ曲紹介のような随筆

「THE END」を見て、初音ミクをテーマにした曲を色々思い出した。 それは初音ミクが登場した当時から、何度となく初音ミクが自ら歌ってきたものである。初音ミクが自分の気持ちを歌ったり、作り手や聞き手の関係を歌ったり、いつか来る未来を歌ったものであったり。
「THE END」を見た後、そんな歌を聞きたくなった。それは、自分にとって初音ミクのメインストリートがそこにあるからだろう。

それと同時に、初音ミクをテーマにした曲や動画作品を並べて紹介しつつ、初音ミクはどんな存在なのか徒然なるままに語るのも、また面白いと思った。
というわけで、やってみることにした。ここでは、初音ミクをテーマにした12曲と2動画を紹介します。

あなただけの歌姫


初音ミクが登場した当初は、初音ミクとそのユーザーの関係を歌った歌が多かったように思う。ユーザーのために歌う存在、それが初音ミクだった。それが原点であり、それが始まり。

儚い存在の初音ミク


DTMマガジンに収録されていた「初音ミク」体験版が、10日間だけ試用可能であることをテーマにした歌。
10日間たつと別れざるを得ないという儚さ。初音ミクは実体のないヴァーチャルな存在だけに、初音ミクをテーマにした歌では「儚さ」がよく取り上げられるように思う。

歌を与えられないと存在できない初音ミク


この歌で「アナタ」は、「ワタシに歌を与えてくれた」存在、つまり初音ミクを歌わせるユーザー。そんな「アナタ」といると、「電子のココロ、震えるの」「私の世界、広がるの」と歌う。逆に1人でいると「孤独な世界に溶けてしまう」と歌う。言い換えると、存在が消えてしまうということだろう。

また、「アナタ」が「ワタシに"I"を教えてくれた」とも歌う。この"I"は、「愛」とも解釈できるし、「私」とも解釈できる。それが良い。

初めての音のまま変わらない初音ミクの歌声


初音ミクの歌声は変わらず、初めて聞いた時のまま。変わるのは、それを聞く「あなた」。
この当時と比べて、初音ミクの声は変わらないのに、周囲の環境が変わり続けている今の状況を思いながら聞くと、色々と感慨深い。

アメリカのロサンジェルス初音ミクのコンサート「MIKUNOPOLIS」でこの歌が歌われたとき、私はそれをニコ生の生中継で見ていた。この歌を初めて聞いたときの歌声がそのまま、遠く離れたロサンジェルスに届いたのを見て、えらく感激したのを覚えている。

ヴァーチャルアイドルとしての初音ミク


バーチャルアイドルとしての初音ミクの原点とも言える曲は、おそらくこの曲だろう。
「目指せsuper idol」「オリコン1位」「メジャーデビュー」「I'm a virtual ido」と、アイドルとつながる言葉が散りばめられている。
この歌が登場した当時は、遠い夢のような話だったのに、今や「オリコン1位」「メジャーデビュー」は既に実現してしまっているのが感慨深い。

何のために歌うか悩む初音ミク


デッドボールPと言えば「ちょっとアレな曲」という人も少なくないと思うけど、そっち方面は名誉の除外ということで。
「永久に続く五線譜」は、「何を求めて歌うの?」と自問し続ける歌。何のために歌うのか、答えの出ない問いを繰り返し続ける初音ミクに、悲壮感を感じてしまう。もし初音ミクに人格があれば、何のために歌うのか悩む時もあるのかもしれない。

ヴァーチャルと現実の狭間にいる初音ミク


この歌では「仮想(ヴァーチャル)と現実の狭間で私は生まれ 愛されてきた」 と初音ミクが歌う。
初音ミクの面白さの1つは、ヴァーチャルと現実の境界が分からなくなる瞬間があることだと思っている。分かりやすいのが、ミクの日感謝祭やミクパ♪のようなキャラクターを投影したライブコンサート。またニコニコ動画には、現実の写真や映像に、初音ミクの3D CGモデルを合成した映像作品もある。こういったものを見ていると、まるで初音ミクが現実の世界に存在するかのような錯覚を覚える事も少なくない。
この曲は、原曲ではなくPVの動画を貼った。このPV動画に登場するショルダーキーボードのような空想上の楽器、「あの楽器」と呼ばれる楽器も、実際に作って実現しようという活動がニコニコ技術部で盛り上がった。

間奏

ここで紹介する予定の12曲のうち6曲を紹介し終えた。
曲は、投稿された日付順に並べているのだが、ここまでの曲は2007年に投稿されたもの。つまり、2007年8月31日に初音ミクが発売されてからわずか4ヶ月の間に、初音ミクのさまざまなイメージが歌われている事が分かる。
それでは、残り6曲へ進みます。

初音ミクの最後


初音ミクの最後、すなわち「消失」するときを歌った歌。
初音ミクが消失する理由は色々解釈できるが、おそらく歌詞にある「皆に忘れ去られた」が主な理由だろう。ヴァーチャルな存在は、人の記憶から無くなって忘れ去られたときに消失する。

後に、この曲のタイトルとしたメジャーアルバム「初音ミクの消失」が発売されるが、そのアルバムには、あらゆる初音ミクの最後を歌った曲が収録されている。「初音ミクの消失」で歌われた最後も、あらゆる可能性の1つ。

今、自分がいる現実世界での初音ミクの最後はどのようなものだろうか。願わくば、幸せなものであって欲しい。

歌の間だけ初音ミクに会うことができる


初音ミクが存在出来るのは歌を聴いてる人が認識してる間だけ」というテーマの歌。逆に言えば、歌を聞いてる人がいない間は、初音ミクは存在しない。

この歌では、「虹」は、リスナーや作り手と初音ミクを繋ぐ橋という存在。「私の歌が虹をかければ 世界は繋がる 一瞬だけど」と歌う。

「今こうしてこの歌をあなたが聴いているのは 私のこの声を愛してくれてるってことですか?」「もうすぐこの歌も終わってしまうけれど この声を聴きにまた会いにきてください」と歌うこの歌が好きで、何度も聴いている。

全てを繋げていく初音ミク


「たくさんの点は線になって」「いくつもの線は円になって 全て繋げてく どこにだって」と歌う曲。初音ミクの歌声を中心として、様々な作り手や聞き手がどこまでも繋がっていく。

この曲を作ったkzさんは、この曲を作る4年ほど前に「Packaged」という曲を発表している。「わたしの歌声 届いているかな 響いているかな」と歌う「Packaged」に対するアンサーソングが、この「Tell Your World」だと思っている。この時に想像したよりも遠くへ、その歌声は届いた。

作り手と初音ミクの物語


作り手と初音ミクの関係に視点を置いた歌。作り手が初音ミクを使い始めて人気者になるも、一度は初音ミクを嫌ってしまう。しかし、再び初音ミクの声に意思を宿して響かせるという物語。

これは、この曲を作ったryoさんと初音ミクの物語かもしれない。でも、多くの作り手と初音ミクの物語を、そこに見てしまう。

人類がいなくなっても歌い続ける初音ミク


人類が消え去った惑星で歌い続ける初音ミクを歌った歌。
歌を与える人や歌を聞く人がいないと存在できなかったはずなのに、人がいなくなった後も歌い続けると、力強く歌う初音ミク
本当に、人類がいなくなっても歌い続けるのではないか。そんな気がしてくる。

初音ミクと出会う人は今も生まれ続けている


初音ミクに出会って歌ってもらう喜びを歌った歌。「ただ君が歌った それだけで嬉しくて」とユーザーの思いが歌われる。
初音ミクが発売されてから5年以上経った今も、初音ミクと出会い、初音ミクが歌った曲をネットで初めて発表する作り手は、今も生まれ続けている。
きっと、これからも。

少し未来の初音ミク


ここからは、初音ミクをテーマにしたMikuMikuDance動画を紹介。
この動画は、初音ミクの未来の可能性の1つ。2039年を舞台にしたSFドラマ。ネタバレになるので多くは語れないけれど、ヴァーチャルな存在でありながら実体化できる可能性の1つを提示された感がある。

はるか未来の初音ミク


これは、SF的なショートストーリーをMikuMikuDanceで映像化した作品。
人類滅亡後の地球に宇宙人がやってきて、地球に残っていたデジタル・データを実体化したら、初音ミクが実体化されたというお話。しかし、ある理由により初音ミクは蒸発して消えてしまう。
蒸発してしまう前に初音ミクが見つけた「居場所」そして宇宙人に残したものが、これ以外にあり得ないというもので、最後に素敵な余韻を残してくれる。
やはり、それが原点であり、私が好きなものでもある。

最後に

以上、初音ミクをテーマにした12曲と2動画作品を紹介してきた。どれも初音ミクについて語る上で重要な作品だと思うし、私のお気に入りの素敵な作品。この紹介が、この素敵な作品を知ったり、鑑賞し直したり、初音ミクについて考察したり、そんなきっかけになれば幸いです。
当初は、「THE END」で示された「ミク」と対比させようとも考えたが、難しいのであきらめました。ただ、共通する部分もあれば、「THE END」では語られていない部分もあると思っている事は言っておきたい。

おそらく、初音ミクをとりまく環境は、今後も色々と変化していくだろう。でも初音ミクは変化せず、大きく変化するのは周囲の人達であろう。

そして初音ミクの原点は、歌う存在であること。その歌声と、歌声の主体を示すシンボルでの2つある。シンボルとは「初音ミク」という名前であり、パッケージに描かれた少女のイラストである。これは、先に紹介した動画「公安39課」でも同様の事が語られていた。
それ以外のものは、周囲の人達から作られたものである。しかし、それも初音ミクを構成する重要な要素である。そんな初音ミクに惹かれて様々な人、すなわち才能が集まり、また新しい初音ミクのイメージが生まれる。周囲の人達の変化に合わせて、初音ミクも変化していくだろう。

それは初音ミクに限らず、それ以外のボカロのキャラクターにも当てはまる「ボカロ文化」となるのだが、ここでは言及するだけにとどめておこう。


以上、初音ミクをテーマにした曲と動画を紹介しつつ、初音ミクについて語ってみた。
結局この試み、初音ミクを散文的に表現しただけで、読んだ人に何か伝わるのか、よく分からなくなってしまった。タイトルに「随筆」と付けたのは、そのため。ただ、書いている自分は楽しかった。自分の原点を再認識したり、歌詞を以前より深く解釈できたりして、面白かった。